GOMAXのブログ

楽しいお話を書いていきたいと思っています。よろしくお願いします。

登山なんて大嫌い

 

私は、登山が大嫌いだ。

子供の頃、手足がかじかむ思いをして冬山を何度も登らされた。アイゼンをはいて一歩一歩山頂を目指す。つま先、指先が千切れるほどに痛かった。嫌で嫌でたまらなかった。

 

中学に入り、御嶽山(3000m級)に登らされた。真夜中に出発し、漆黒の闇に足を踏み入れた。

「ご来光」とやらが目的だったらしい。

這うようにして九合目近くまで登った時、卵の腐ったような匂いに包まれ、朝食が口腔から一気に噴射した。

青い顔をして頂上までたどり着き、やっとの思いで拝んだご来光は、どこまでも続く見渡す限りの青い雲海をピンクに染め上げていった。

素晴らしかった。

御来光もびっくりしたが、何より覚えているのは自動販売機のコーラーの値段だ。法外な値段で売られていた。

「やっぱり山登りは無いな」と確信した瞬間だった。

「さぁ終わった、終わった帰ろう!!帰りましょう」
と心中で叫んでいると、耳を疑う言葉が返ってきた。
「さぁ、尾根沿いに歩くよ」

聞きたくなかった。

尾根沿いに延々と道なき道を歩かされ、目的の万年雪を見たが、汚れきった真夏の雪にさほど感動も覚えず、ただただ、疲労に耐えながら下山した。

麓まで帰ってきて、「やっと、終わった!!」と歓喜を上げたのもつかの間、硫黄風呂に入れられて、腐った卵の匂いに包まれながらの昼食。何を食ってもたまご味。

無い!山登りは一生しない!!

と、決意を固めて15年後。ひょんなことから「お願いします!一緒に大山登ってください」と、頭を下げられて渋々承諾した。

伯耆大山」言わずと知れた中国地方の最高峰(1700m級)だ。

「やだ、やだ」と三十路過ぎの大人が、駄々をコネながら、乳酸値爆上げして、低下するspo2を必死に食い止めようと息を荒げて登った。

山頂に到着し、さほどの感動もなく、15の時同様
「さぁ。終わった、終わった帰ろう!!」
歓喜して下山した。

やっぱり山登りは嫌いだ。と言う私の思いに変わりはなかった。

それから10年以上経過して、何をどう間違えたのか。
「山に登ってみよう」と思い立ち、いきなりはまずいので、と大人らしい思慮のもと、まずは、「槙尾寺と紀三井寺からだな」と、寺参りから開始した。しんどかった。寺まで徒歩20分と書かれた立て看板を見てから、40分以上かかってようやく到着した。

「やっぱり向いてないかも」とすぐにくじけそうになったが、なぜかトレーニングを辞めなかった。

よし、準備万端!登るぞ〜

と、意気揚々選んだ山は金剛山大阪府最高峰の山)標高1125m。今の俺にはこれぐらいだろ、と車を走らせて、一路金剛山を目指した。

小学生ぶりに見る、登山口。何一ついい思い出のない、この登り口。(昔あった杖屋さんがつぶれてなくなっていた)

「よし!」覚悟を決めて登り始めて10分
登山入口の水飲み場。懐かしかった。(ここにたどり着くまでに、少なくとも三回は挫折しかけた)

「さぁ」と気合を入れなおして山に足を踏み入れた。「なんでこんな事してるんだろう」と自問自答しながら死ぬ思いで5合目までたどり着いた。

「よし、山登りに何の意味もない。下山だ!」

と思って腰を上げたら、ウルトラマンとバルタン星人のお地蔵様が、「もう帰るのか?」と私に問いかけた。

ん〜。しかしですね。マンさん。

と石像と無言の会話を5分歩ど交わして、私は恨めしそうに帰路を眺めて、山頂を目指した。7合目、8合目、ここまできたら、勿体なくて下山できなかった。

10m登っては地面にへばりつき、10m登っては地面にへばりつく。自他ともに認めるぼろぼろの状態で登って行った。

そんな私をあざ笑うかのように、腰をくの字に曲げた老婆が、近所に散歩にでもでかけるような格好と軽快な足取りで私を追い抜かしていった。

す、凄い、仙人なんだな。きっと。

などとくだらないことを考えながら、上を目指した。
9合目にようやくたどり着いたとき、8合目で抜かされた老婆が下山してきた。

仙人決定!

どうにか山頂にたどり着き、数十年ぶりに転法輪寺にお参りして、千回登った人、一万回登った人〜とその業績を称賛するパネルを見上げた。(むか〜しからこのパネルはあった)

山頂でコーラを飲んだ。炭酸が喉をシュワシュワーっと湿らせる。「うまい」天気も良く、すがすがしい気分だった。

下山して、笑う膝を抑え込むようにして家路へと車を走らせた。

あ〜やっぱり山は嫌いだな。また登ってみようっと。

(?ー?)

 

 

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