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GOMAXのブログ

楽しいお話を書いていきたいと思っています。よろしくお願いします。

「うちんち」㉑

小説(うちんち)

うちんち㉑

 

アクセス数が下がる~。が、乗り掛かった舟である。最後までやりとげなければ・・・

はてなブログチャレンジの道は険しいのである。

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 うちんち㉑

 

夕食をほおばりながら、花梨は近頃の源三郎の様子を幸子に語った。幸子は困惑した表情で花梨の話を聞いていた。


「おじいちゃん、花梨ちゃんのこと、さつきちゃんって呼んだん?」


「うん。なんか変やねん。病院に居(お)った時も、ちょっとは変なこと言うとったけど、さらに磨きがかかってんねん」


「そう……」


「うん。せやから、花梨考えてん。おじいちゃん、早(はよ)うお家に帰って来た方がええねん、絶対! 病院とか施設とかに居(お)ると、おじいちゃん、だんだんおじいちゃんや無くなっていくさかい」


「う~ん……でもな……」


幸子は自分だけでは判断しきれないでいた。


「だからおばちゃん。おじいちゃん、お家に帰してあげようや」


花梨の目にはうっすらと涙が浮かんでいる。


「う~ん」


「おじいちゃんや無くなってもうたら、花梨イヤや! おじいちゃん、花梨のこと忘れてまうやんか!!」


花梨はそう言って自分の部屋に駆け込んだ。


「……」


幸子は長い間、頭を抱えていた。が、ふいに顔を上げ、つぶやいた。


「花梨ちゃんの気持ちも大事にしてあげなな。あとは野となれ山となれ、や。そん時はそん時考えたらええねん!」


幸子は立ち上がり、時恵とさつきの仏壇まで歩いて行った。


「姉ちゃん、さつきちゃん。二人を守ってあげてや。私もできるだけのことはするさかい」


――チン、チン、チーーーン。


幸子は仏壇の御鈴を、天まで届くよう力いっぱい打ち鳴らした。

 

ほどなくして、源三郎の退所が決まった。事務長の佐々木が幸子に、介護支援専門員(ケアマネージャー、通称ケアマネ)の坂東を紹介してくれた。坂東は、過去に看護師として働いていた経歴を持つ、やり手の介護支援専門員で、佐々木は仕事で以前から見知っていたのだという。


「この人やったら、間違いないから」


佐々木はそう言って幸子に名刺を手渡した。


幸子が名刺の番号に電話をかけると、坂東はすぐに佐藤家に訪れた。


坂東は、色黒で大きな体格と、良く通るハスキーボイスの持ち主だった。地方出身らしく、聞きなれないお国言葉を話した。


――外国のお相撲さんみたいなおばちゃんやな……武蔵丸や。


花梨は密かに思った。


「分かりました。任しといて下さい。幸子さんと花梨ちゃんと、みんなして、源三郎さんのこれからを作っていきましょう」


坂東は幸子と花梨の話をひととおり聞き終えると、そう言って右手を伸ばした。花梨が小さな手を差し出すと、坂東はそれをギュッと握りしめ「よろしく!」と笑顔で言った。


それから、坂東は夜遅くまで、源三郎の今後について幸子と話し合った。初めは会話に加わっていた花梨だったが、やがて飽きてしまい、小源太と遊び始めた。それでも二人の話は終わらない。花梨はおねむの時間になったので、お先に就寝することにした。


長い話合いの末、坂東はケアプランの方向性を幸子に伝えた。幸子は分からないことだらけだったが、


「はい、はい」


と小刻みにうなずきながら、必死に坂東の話に耳を傾けていた。

 

つづく