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GOMAXのブログ

楽しいお話を書いていきたいと思っています。よろしくお願いします。

NHKへドラマの撮影に行った時のお話 おまけ:うちんち⑧

楽しいお話におまけで小説をつけるっちゅうのはどうだろうか?

 

これなら、少しは読んでいただけるだろうか?

 

まぁ、何事も案ずるより産むが易し。やってみよう。そうしよう。チャレンジ、チャレンジ。

 

これでダメなら、次の手だ!∠( ゚ω゚)/ ファイト!オー!

 

むか〜し、昔。私がまだ、若くて若くてどうしようもなく、脳みそが明後日に向かってしまい、なにを血迷ったのか、役者なんぞをやっていた頃のお話。

 

 「次はNHKです。よろしく」

 

と、マネージャーさんから台本を手渡され、一路大阪城のほとりにあったNHKへ意気揚々ドラマの収録に行ったのでした。

 

 当時目つきの悪さを事務所の社長に買われ、ヤクザ役やサラ金の取り立て屋なんて役しか回ってこなかったのですが、まぁ一応台詞付き、役名付きでギャラもそこそこ、バイト代程度にはなっておりました。

 

 その時もやはり、ヤクザの手下の役。台本をパラパラと読んで、まぁ、取り立ててなんて事ない役でした。普通にやれば、NGなんて出るはずのない役回り。

 

 しかし・・・そうは問屋が下ろさなかったのでごぜーます。


NHKの関係者通用門から事務所の名前と行き先を書いて、控室に入る。

 

衣裳部屋に行き
 
「おっちゃん、俺の衣装どれ?」

 

と、衣装さんと大物俳優さんのマネージャーさんを間違えて聞いちまった。

 

「俺違うぞ」

 

と、自分の親父ほどのお年の熟練マネージャーに冷ややかな視線を浴びせかけられた。

 

これが、けちのつきはじめだったような気がする。

 

なんだか嫌な予感。

 

さてさて、衣装や小道具をつけていざ撮影。

 

主人公(大物俳優OEさん)のアパートにヤクザの事務所まで連れてくるヤクザの子分。これが私の役どころ。

 

セットのアパートのドアを叩き、

 

私 「すんません」

 

ドアが開く。主人公が訝しげに顔だけ出す。

 

私、ずいと主人公に顔を近づけニヤリと不敵な笑みを浮かべて、

 

「事務所まで来てもらえませんやろか」

 

主人公と一緒にアパートを出る。

 

なんてイージーな役。チョチョイノチョイでOK。

 

・・・のはずだったのだが・・・

 

マイクで監督からスタジオいっぱいに広がる声で

 

「ちょっと、チンピラ役ちゃんとやってくれる!」

 

と、お叱りのお言葉。

 

あれ?お気に召しませんでしたか?

 

では。とばかりにテイク2の演技プランを思案。

 

セットのアパートのドアを叩き、

 

私 「すんません」

 

ドアが開く。主人公が訝しげに顔だけ出す。

 

私、ずいと主人公に顔を近づけ当時、実の親からも定評のあったガラの悪い目つきで睨みつける。

 

「事務所まで来てもらえませんやろか」

 

主人公と一緒にアパートを出る。

 

よしこれで行こう。こっちだね監督さん。と演技プランをかため、ばっちこい!と意気込んでいると、主人公の大物俳優さんが私に耳打ちするように

 

「ヤクザってのは意外にへらへらしてるもんなんだよ。それでやってみな」

 

と、アドバイスしてくれた。

 

元来私は人の意見をとってもよく取り入れるたちなので。すぐさま演技プラン変更。

 

テイク2

セットのアパートのドアを叩き、

私 「すんません」

ドアが開く。主人公が訝しげに顔だけ出す。

私はへらへらと手もみでもしそうな愛想のいい笑顔で

「事務所まで来てもらえませんやろか」

主人公と一緒にアパートを出る。

 

「おい!チンピラ!!もういいよ!!帰れ!!」

 

と、監督から本気の怒声。超怒られた。そのとき大物俳優OEと言えば、知らぬ存ぜぬと言った風にセットの台所で食器をいじっていた。

 

あ〜!!だってあいつが!!と指差すわけにもいかず、私はすごすごとNHKを後にしたのだった。

 

後日テレビ放映を見てみると。

 

ドアをノックする私の手と声だけが採用されていた。後はすべてカット。

はぁ〜。落胆。

 

許すまじO・E!!

 

今でもこの俳優さんがテレビに出ていると

 

「俺はこいつに潰されたのだ」

 

と、若かりし頃の未熟極まりない芝居を思いっきり棚に上げて、ちょっと盛り気味に話題のネタにさせていただいている。

 

ご指導、いい思い出をありがとう。奥〇瑛〇さん!!

 

m(_ _"m)ペコリ.

 

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うちんち⑧

 

大阪ではさほど被害は見られなかったが、神戸に近づくにつれ、非日常的な光景が源三郎の目に飛び込み始めた。建物の窓ガラスが粉砕し、路上に散乱している。国道は神戸へ向かう車で大渋滞していた。


――クソッ――


源三郎は焦りを募らせ、ハンドルを叩いた。


緊急車両のサイレンが姦しく耳につく。源三郎は渋滞に苛立ち、国道を避け、路地へとハンドルを切った。


「なんや?」


源三郎は目を疑った。おもちゃ箱をひっくり返したようにあっけなく横転した車や、倒れた電信柱がごちゃっと積み重なり、行く手を塞いでいた。


――止(や)むなし――


源三郎は、今来た道をUターンし国道へと戻った。神戸へと進むと、惨状はさらに酷くなっていった。アスファルトは盛り上がり、地割れし、コンクリートの瓦礫が道を覆い尽くしていた。神戸へと向かう車のテールランプが百目の如く不気味に連なり、源三郎の不安を煽った。源三郎の逸る気持ちとは裏腹に、車はにじりとしか歩を進めなかった。


神戸に向かう道中、家々はグシャリと崩れ、列車は脱線し、傾いていた。国道も途中で通行不能となった。


――ここもダメか――


源三郎は再びハンドルを切った。進める限り路地を縫って車を走らせたが、ほどなく、通行止めの看板と、立ち並ぶ警官に行く手を阻まれた。源三郎は、なかなかさつきのアパートのある長田区に辿り着けずにいた。


神戸市内の有様は、空襲直後そのものだった。火の手があちこちで上がり、倒壊したビルやマンションがうず高く積み重なっていた。街の総てが、朽ち果てた産業廃棄物のように押し黙っていた。
朝九時過ぎに大阪を出て、やっとの思いで長田区に入った頃には、日はどっぷりと浸かっていた。
――さつきのアパートは――


時恵に連れられて一度来たことはあったが、景色があまりにも違いすぎる。さつきのアパート付近まで来ると、源三郎は車のドアを開け、ガシャリと瓦礫の上に足を下ろした。車外は異様に埃っぽく、ガス臭い。変わり果てた街で源三郎は、茫然と立ち竦むしかなかった。


源三郎は辺りを見渡し人影を見つけると、急いで駆け寄り、この地区の避難先を教えてもらった。避難場所で時恵達を探したが、所在は分からなかった。避難場所の人に「病院ではないか」と言われ、教えてもらった病院に急いで車を走らせた。


病院は玄関のガラスが割れ、ベニヤ板で補強されていた。野戦病院と化した院内は慌ただしく、怒号が飛び交っている。看護師の一人を捕まえ、時恵達の名前を告げたが「分かりません!」と怒鳴りつけられただけだった。源三郎は病院の奥へと歩を進めた。病室のベッドでは足らず、床に布団が敷かれ、患者達が横たえられていた。くまなく見て回ったが、ここにも時恵達の姿は無かった。


源三郎は病院を出て、降り積もるガラスの破片を踏みしめ歩き始めた。灯りを失った街の中を、懐中電灯と絶えない火の手を頼りに、西へ東へと当てもなく捜し回った。建物はいずれも形骸こそ残存しているものの、いつ全壊してもおかしくない状態だった。マンションの一室や倒壊した家屋の底から、黒煙が勢いよく闇夜に吸い込まれていった。


「時恵―――! さつきーーー!」


源三郎は声の限りに二人の名前を叫び続けた。道端で焚き火を囲む人々に、時恵とさつきの写真を見せて行方を尋ねたが、手掛かりは一向に掴めなかった。源三郎の声は掠れ、もはやほとんど出ない状態だった。


途方に暮れた源三郎がふと目をやると、大勢の人々が線路を辿り、歩いて行く様子が見えた。おそらく大阪へ向かっているのだろう。


源三郎の脳裏にまた記憶が蘇った。空襲を受けた後、親戚の家へ向かう途中、たくさんの人々が大阪市内を脱出しようと長蛇の列を成していた。誰もが肩を落とし、ただ黙々と歩いていた。戦後六〇年も経つというのに、目前の光景は、あの夜に母と二人で歩き見たものとまるで同じだった。跫響が、人々の悲しみを代弁するかのように、真冬の空に鳴いていた。


源三郎は嗄れた咽喉を絞って、妻と娘の名を呼び続けた。ふと気づけば、東の空が白み始めていた。


日が高くなるにつれ、被害の大きさが輪郭を現してきた。崩落した電車の高架からは、赤錆だらけのレールがブラリと垂れ下がっている。瓦礫の下敷きになった自動車はどれも原型を留めていない。高速道路は無残にもM字に折れ、バスがその半身を空中に投げ出している。そんな中、〝一個五千円〟と書かれた焼き芋屋の屋台に、行列ができていた。


「えげつない商売しょんな~」


源三郎は行列を横目に先へと急いだ。ほんの一、二日ライフラインがストップしただけで、大都会神戸は秩序と機能を失っていた。


「コンビニの棚から飲物や食物が無くなり、窃盗や強奪が繰り広げられています」


カーラジオからニュースが流れる。車で小休止していた源三郎はそれを聞きながら「ほらね」と、持参したサバ缶をほおばるのだった。


源三郎はその日は車で夜を明かし、携帯電話で職場と幸子に連絡を取りながら時恵達を探した。が、二人の行方や安否は全く分からなかった。地震直後に一名と報じられていた死亡者は、時間とともに一〇名、一〇〇名と桁を変え、次々と増えていった。死亡者が四桁に上る頃には、源三郎の不安はピークに達していた。


「近所の人の手で子供たちとその母親が助け出され……」
「瓦礫の中から一人の赤ちゃんがレスキュー隊によって……」
「アパートの下敷きになっていた女性の遺体を発見……」


誰のものとも分からぬそんなニュースに、源三郎は一喜一憂するのだった。

 

――もう歩けんな――


昼夜問わず歩き続けた源三郎の足は、もはや言うことを聞かない。瓦礫を乗り越えながらの探索と深憂で、源三郎の体力と精神力は既に限界を迎えていた。ただ家族への思いだけが、源三郎の下肢の激痛を抑え込み、足を前へと進ませた。


ふと、膝の力が抜け落ち、源三郎は地面に手をついた。ガラスの破片が手に突き刺さり、源三郎の両掌は赤く染まった。


「時恵、さつき……かくれんぼはもうええから。お父ちゃんの負けでええから。早よう出て来てぇな……」


源三郎は止めどなく流れる涙を拭うこともせず、地を這いながら前へ前へと進んだ。掌には脈動のたびにザクザクと痛みが走った。源三郎の後を追うように、滴り落ちた血が一筋の点線を描いていた。


――一旦、帰るか――


車のガソリンも底を尽きかけていた。源三郎は後ろ髪を引かれながらも、大津に向かって車を走らせ始めた。その時突然、けたたましく携帯電話が鳴った。幸子からだった。


「義兄さん! 姉ちゃんら、見つかったって。K中央病院らしいわ。さつきちゃんの母子手帳があったんやって!」


「わかった! ありがとう!」


源三郎は急いで、幸子の言った病院へ向かった。


その病院は、神戸から遠く離れた大阪市内にあった。院内は大勢の人で溢れ返っていた。赤ん坊の泣き声、患者の怒鳴り声や悲鳴、病院スタッフの叫び声、止めど無く鳴り響く救急車のサイレン……病院の混乱ぶりは神戸同様に凄まじい。人々の波をかき分け、源三郎は、病院の奥へと進んだ。


「すみません。すみません」


源三郎は、忙しそうに走り回っている看護師の一人を捕まえ、早口に尋ねた。


「佐藤です。妻と娘がこの病院に運ばれたと連絡があって」


「ご家族ですか、こちらです」


看護師は慌てた口調で源三郎を誘導した。途中で別の看護師に何やら早口で伝えると、入れ替わった看護師が、落ち着いた口調と足取りで源三郎を案内した。


明らかに病室ではないその部屋の前で、看護師は立ち止まった。


源三郎は、血の気が引いていくのを感じた。室内には診療台が二台並べられており、その上に人が一人ずつ横たえられ、白いシーツで覆われていた。源三郎のいる所からベッドまでたった二メートルほどしかないのに、足が竦んで前に出ない。


「お顔を見てあげて下さい。綺麗なお顔をされていますよ」


看護師が二人の顔にかけられた白い布きれを取り、言った。


言葉にならない気持ちが濃霧のようにたち込め、源三郎の胸を侵食していく。源三郎は崩れそうな意識を押して、ふらふらと二人の下へ歩み寄った。


――時恵――


そこには紛れもなく、源三郎が這いずり回って探した愛する家族がいた。時恵とさつきは、まるで眠っているかのような綺麗な顔をして横たわっている。


赤ん坊の泣き声が聞こえ、山積みのコンクリートの残骸の下で二人は発見された。時恵はさつきを抱きかかえ、さつきは赤ん坊を庇うようにして死んでいた――看護師は消防士から聞いたことを、静かに源三郎に語った。


源三郎は、安らかな寝顔の妻に声をかけようとした。だが声は声帯を通過する瞬間、嗚咽に変わり、灰色の部屋に放たれた。時恵の隣に寝かされた、久しぶりに見る、たった一人の我が子。少しやつれて見えたが、優しい顔をして眠っている。


「ごめん……ごめんな……」


源三郎はさつきを抱きしめ、謝り続けた。外へと促す看護師の手を振り払い、いつまでも二人の傍から離れなかった。


源三郎は、久しぶりの家族揃っての団欒を、霊安室で泣きながら過ごした。

 

看護師に声をかけられて、夜が明けていたことに気づいた。看護師は源三郎の肩を支え、立つように促した。源三郎はおもむろに立ち上がり、赤く腫れた目で、時恵とさつきの顔をそっと見やった。そして、何度も振り返りながら、霊安室を後にした。


院内の空気はどんよりしていて、立っているだけで源三郎は息が詰まりそうだった。


「こちらへ」


看護師は別の病棟へ源三郎を案内した。


小さなベッドの前で看護師が立ち止まった。そこには、一人の赤ん坊が寝かされていた。赤ん坊は頭部に包帯を巻かれていたが、幸せそうな顔をして、自分の親指をしゃぶりながら、静かに眠っていた。


「佐藤さん、お孫さんです」

 

看護師の優しい声が廊下に染みた。

 

つづく