GOMAXのブログ

楽しいお話を書いていきたいと思っています。よろしくお願いします。

私のセックスの回数、多い?少ない? おまけ:うちんち⑬

昔、職場でひょんなことから、セックスの回数の話になった。

 

その場にいたスタッフは私以外すべて女性。なおかつ、これまた私以外すべて既婚者だった。

 

30代〜60代で平均結婚歴約10年以上のベテラン奥様たちである。

 

 

 

若かった私は、男とみられていなかったのか、彼女たちは赤裸々な夫婦生活に花を咲かせ始めた。

 

「年に数回かな〜」

 

と、子供三人を育て上げている三十代半ばスタッフ

 

「え〜!!」

 

周囲のスタッフが感嘆の声を上げた。

 

「そんなに少ないの〜。週に三回は、やってるわよ〜」

 

看護師Sが声を上げた。

 

そっちかーい!!

 

と、これまた周囲の声がイチオクターブ上がる。

 

「私のところも多いかなって思ってたけど、まだまだね。週一ぐらいだもの」

 

と、看護師Y 

 

どえ〜!!

 

十分多い、多い

 

と他のフタッフが驚きの声を上げる。

 

自分のところのセックス回数が多いのか少ないのか、女性スタッフたちは、患者さんのケースカンファレンスより白熱、喧々諤々

 

熟考の上話し合った結果、結婚歴10年以上のお姉さま方は、年に一回もあれば万々歳との結論に達していた。

 

結婚歴10年を過ぎて週三回、週一はかなり多い方だという結論に至った。

 

そんなハードスケジュールをこなしていた、セックス回数多数派の2人はこの話をした数年後、離婚している。

 

その他のセックス少数派のみなさんは、結婚生活を継続されているのだから、セックスの回数と夫婦仲は関係ないのでしょうかね〜。

 

(=´ー`)ノ

 

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うちんち⑬

 

翌日もその翌日も、医師から〝立ってもいいですよ許可〟が出されることは無かった。もういいだろう、と源三郎が自らの判断で立ち上がろうとすると「佐藤様~!!」である。立ちはだかる〝許可〟の壁。源三郎は、ベッド上から降りることができないでいた。


ある日の夜。源三郎は無性に喉の渇きを覚え、ナースコールボタンを押した。が、待てど暮らせど看護師は現れない。痺れを切らした源三郎は重い体を起こして、病室内の洗面台まで歩いて行き、蛇口に手をかけた。その瞬間、看護師が突如現れ、悲鳴に近い金切り声を上げた。源三郎は事情を説明しようとしたが取りつくしまも無く、またも即座にベッドへ押し込まれた。その後すぐに医師が病室に現れた。医師は「これを」と源三郎に錠剤を手渡し、飲むように促した。源三郎は何の薬か尋ねようとしたが、無言でベッドを取り囲む医師や看護師に気圧され、ひとまずその薬を飲み下した。医師達は源三郎の飲薬を見届けると、静かに病室を後にした。

 

翌朝――


源三郎は目覚めが悪かった。看護師に朝食を勧められたが、食欲が湧かない。ただただ無性に眠い。


「薬だけでも飲んで下さい」


看護師は、無理やり源三郎の口に薬をねじ込んだ。そして


「朝食ここに置いときますから」


と言って床頭台に膳を置き、病室を出て行った。


源三郎がようやく眠さから解放されたのは、看護師が昼食を運んできた頃だった。源三郎は看護師に問いかけた。


「看護婦さん、いつになったら立ってもええんかな。早(はよ)う帰らんと、孫の世話もあるよって。そろそろサンタもせなあかんしな」


「お医者さんの許可があるまで我慢して下さい。お薬置いときますね」


看護師はそう言い残し、出て行った。


――せやから、いつ許可が出んねん、って聞いとんねん!


源三郎はいつになるのか分からない〝許可〟を、苛立ちながら待つほかなかった。


昼食を食べ終わって小一時間ほど経った頃、白衣姿の男が一人、ワゴンを押して源三郎の病室に入って来た。ワゴンの上には血圧計、聴診器、握力計、鋏、箸、巻尺、物差し、お手玉、けん玉、福笑い等々、何に使うのか予想もつかない道具で溢れていた。


「こんにちは、佐藤さん」


男は大柄で無精ひげを生やし、御世辞にもお洒落とは言えない出で立ちだが、落ち着いた心地のいい声をしていた。


「はい」


源三郎が答えると、男は顔をクシャッと崩し、笑顔で話を続けた。


「私、理学療法士の高畑、言います。よろしくお願いします」


源三郎が首をひねると高畑は「ハッハッハ」と豪快に笑った。


「いや~。理学療法言うても分からないですよね。リハビリです、リハビリ。私が今日から担当させて戴きます」


「あ~、リハビリね」


源三郎はほっとした。その言葉は聞いたことがある。具体的にはよく分からないが。
高畑は検査をすると言って、痛い所は無いか、痺れは無いかと源三郎に問いかけながら、源三郎の手足を動かした。それから


「すみませんが、これも一応検査なので、協力して下さい」


と前置きして、源三郎に次々と質問し始めた。その内容は要領を得ないものばかりで、何を検査しているのか、源三郎には理解できなかった。


「今日の日付は?」
「百引く七は?」
「野菜の名前をたくさん言うて下さい」


てな具合だ。検査だと言われなければ、馬鹿にされているのかと思うような内容である。


「ありがとうございました。今日はこれで終わりです」


高畑はそう言って立ち上がった。源三郎は、拍子抜けして高畑に聞いた。


「これで終わりですか?」
「はい」


高畑は真面目な顔で答えた。


「リハビリいうたら、歩く練習したり、階段登ったりするんやないの?」


源三郎が言うと、高畑が答えた。


「まぁ、そういうんは追い追いですよ、追い追い。医師の許可が無いとできないので」
「また〝許可〟か」


源三郎はうんざりして言った。


「どうかしました?」


高畑が源三郎の顔を覗きこんだ。


「どうもこうもあらへんがな。さっさと立って早よ帰らなあかんのに、許可が無いから立つな、許可が無いから起きるな、言われて……看護師にいくら言うても暖簾に腕押しや。ほんでまた、あんたもや」


源三郎は吐き捨てるように言った。


「すみません。国の決まりことやさかい、そればっかりは、どーしょうもないんです……」


高畑は沈鬱な表情を浮かべてそう答え、肩を落として病室から出て行った。

 

後日。源三郎と幸子は、医師から精密検査の結果の説明を受けた。病名は脳梗塞。症状は軽く、麻痺もそんなには残らないだろうとのことだった。しかし、予断を許さない時期であるとも告げられた。


花梨が学校を終え、いつもどおり源三郎に会いに行こうと、病室へ続く廊下を歩いていると、ナースステーションの中から怒鳴り声が聞こえてきた。花梨はビックリして、そーっとナースステーションの前を横切って源三郎の部屋へと入った。


「おお、花梨か」


出迎えた源三郎に、花梨は小声で耳打ちした。


「あんな、お医者さん同士でケンカしてんねん」


「ほう、珍しいこともあるもんやな。どんな先生やった?」


源三郎が興味本位に聞くと、花梨が答えた。


「ヒゲ生やした、から(体)の大きいクマみたいな先生と、花梨に棒貸してくれたいつもの先生」


「あ~、リハビリの先生か」


源三郎は、ポンと手を打って言った。花梨は「リハビリ?」と首を傾げた。


ナースステーション内では、源三郎の担当医と理学療法士の高畑が言い争いをしていた。二人とも病院内であることを忘れているのか、口論がヒートアップしている。


「一日も早よう訓練始めんと! 歩けんようになったらどないしますん?! 幸い認知テストもノーマルやし、今のうちにやっとかんと!」


高畑が切迫した口調で医師に訴えている。


「今は安静期なんだよ! 君も分かってるだろうが! 血圧の変動が激しい今の時期に、リハビリなんかできっこないだろう!」


医師も負けじと声を荒げている。


「せやから、バイタル変動はモニターで確認しながらやりますよって! ここ二週間は変動ありませんし、急性期やからこそ、やっとかなあかんのです! これでも遅いくらいなんですよ?!」


「いくら変動なくても安静期は安静期なんだよ!」


医師は苛立ちが頂点に達しているようだ。


「それに、昨夜(ゆうべ)レンドルミン出てるやないですか! 眠剤入れてしもたら理学療法もへったくれもありませんやん!」


高畑も負けていない。


「うるさーい、うるさい! これだからリハビリ屋は嫌いなんだよ。何かにつけて〝すぐ起こせ、リハビリやらせろ〟って。やらせろって言うから一回やらせりゃこれだ。TIAが起きたらどう責任取るつもりなんだ? お前ら療法士は、医師の指示箋がなきゃ患者に指一本触れられんのだろう! 法律にそう書いてあるだろうが! 素人は黙って医者の言うこと聞いてりゃいいんだよ! しばらくリハビリは許可しないからな! いいな?!」


担当医はそう言い放ち、ナースステーションを後にした。


「――クソ!!」


高畑は、バン! と両掌で机を思い切り叩いて、やり場のない怒りをぶつけた。
以後しばらく、高畑が源三郎の前に姿を現すことは無かった。

 

十二月二五日、朝。


花梨は目を覚ました。枕元の靴下には、生まれて初めて、プレゼントが入っていなかった。けれど花梨は、靴下を見て満足していた。

 

〝サンタさんへ


おじいちゃんが早く元気になりますように、よろしゅうたのみます。


かりん 〟

靴下の中には、昨夜花梨が書いたサンタクロース宛の手紙が入れてあった。


「プレゼントが入ってないっちゅうことは、願いが叶う、っちゅうことやな」


花梨はめっちゃハッピーな解釈をしていた。

 

つづく